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大阪地方裁判所 平成3年(わ)2163号 判決 1992年10月15日

本店所在地

大阪市中央区豊後町三丁目二番八号

大谷興産株式会社

(代表者代表取締役 金銅克巳)

本店所在地

大阪府東大阪市足代一丁目一二番一四号

大農建設株式会社

(代表者代表取締役 山中正二)

国籍

韓国(忠清南道錦山郡富利面倉坪里六五四)

住居

大阪市阿倍野区北畠一丁目七番一二号

会社役員

柳川博嗣こと廣相

一九三五年三月二七日生

主文

被告人大谷興産株式会社を罰金七〇〇〇万円に、被告人大農建設株式会社を罰金六五〇〇万円に、被告人廣相を懲役二年四か月及び罰金七〇〇〇万円に処する。

被告人廣相につき、罰金を全部納めることができないときは、二〇万円を一日に換算した期間労役場に留置する。

理由

(犯罪事実)

被告人大谷興産株式会社(以下、「被告会社大谷興産」という。)は、大阪市中央区豊後町三丁目二番八号に本店を置き、不動産売買等を目的とする資本金四〇〇〇万円の株式会社であり、被告人大農建設株式会社(以下「被告会社大農建設」という。昭和六三年二月五日付の社名変更前は大農株式会社。)は、大阪府東大阪市足代一丁目一二番一四号に本店を置き、不動産売買等を目的とする資本金三二〇〇万円の株式会社であり、被告人柳川博嗣こと廣相(以下、「被告人」という。)は、第一農林株式会社(大阪市阿倍野区阪南町一丁目四三番七号に本店を置き、不動産売買等を目的とする資本金四〇〇〇万円の株式会社。以下、「第一農林」という。平成三年一〇月二二日合併により解散した。)の代表取締役であり、右被告会社大谷興産及び被告会社大農建設の実質的経営者として、右各社の業務全般を統括していたが、被告人は、

第一第一農林の業務に関し、法人税を免れようと企て、

一  架空の販売手数料を計上するなどの方法により所得の一部と課税土地譲渡利益金額の全てを秘匿して、第一農林の昭和六一年四月一日から同六二年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が四四五九万五二四七円(別紙1修正損益計算書参照)、課税土地譲渡利益金額が二九六二万九〇〇〇円(別紙4の(1)修正損益計算書参照)あったのに、同年五月二五日、大阪市阿倍野区三明町二丁目一〇番二九号の所轄阿倍野税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七六〇万七七四七円で、課税土地譲渡利益金額はなく、これに対する法人税額が九一万五一〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を経過させた結果、この事業年度における正規の法人税額二二八〇万八三〇〇円との差額二一八九万三二〇〇円(別紙11税額計算書参照)を免れた。

二  不動産売買における仕入金額の水増し、あるいは売上金額の圧縮などの方法により所得の一部と課税土地譲渡利益金額の一部を秘匿して、第一農林の昭和六二年四月一日から同六三年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が五億六〇六四万九六〇三円(別紙2修正損益計算書参照)、課税土地譲渡利益金額が四億九七七八万七〇〇〇円(別紙4の(2)修正損益計算書参照)あったのに、同年五月三一日、前記阿倍野税務署において、同税務署長に対し、その欠損金額が一二八九万九三五二円で、課税土地譲渡利益金額が一億三七九五万四〇〇〇円で、これに対する法人税額が二四一一万五一〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を経過させた結果、この事業年度における正規の法人税額三億四六九三万四〇〇〇円との差額三億二二八一万八九〇〇円(別紙12税額計算書参照)を免れた。

三  架空の貸倒損失を計上するなどの方法により所得の一部を秘匿して、第一農林の昭和六三年四月一日から平成元年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一億四六〇六万一一六三円(別紙3修正損益計算書参照)あったのに、同年五月三一日、前記阿倍野税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八一四一万八七二三円で、これに対する法人税額が一億一八五八万六三〇〇円(ただし、期限内申告所得金額に対応する土地重課税額八九〇九万二五〇〇円を申告税額とみなして加算した。)である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を経過させた結果、この事業年度における正規の法人税額一億三二三六万二一〇〇円との差額一三七七万五八〇〇円(別紙13税額計算書参照)を免れた。

第二被告会社大谷興産の業務に関し、法人税を免れようと企て、

一  不動産売買における仕入金額の水増し、あるいは売上金額の圧縮などの方法により所得の一部と課税土地譲渡利益金額の全てを秘匿して、被告会社大谷興産の昭和六一年一一月一日から同六二年一〇月三一日までの事業年度における実際の所得金額が三億五四三三万八一一六円(別紙5修正損益計算書参照)、課税土地譲渡利益金額が二億七〇六一万七〇〇〇円(別紙7の(1)修正損益計算書参照)あったのに、同年一二月二八日、大阪市中央区大手前一丁目五番六三号(旧東区大手前之町一番地)の所轄東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六三三二万一六九円で、課税土地譲渡利益金額はなく、これに対する法人税額が二五一四万八六〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を経過させた結果、この事業年度における正規の法人税額二億四七万八二〇〇円との差額一億七五三二万九六〇〇円(別紙14税額計算書参照)を免れた。

二  仕入金額を水増しするなどの方法により所得の一部と課税土地譲渡利益金額の全てを秘匿して、被告会社大谷興産の昭和六二年一一月一日から同六三年一〇月三一日までの事業年度における実際の所得金額が二億四八四九万八八一二円(別紙6修正損益計算書参照)、課税土地譲渡利益金額が二億一〇二七万一〇〇〇円(別紙7の(2)修正損益計算書参照)あったのに、同年一二月二七日、前記東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一四三九万三三七六円で、課税土地譲渡利益金額はなく、これに対する法人税額が二二九万二一〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を経過させた結果、この事業年度における正規の法人税額一億六三六九万七五〇〇円との差額一億六一四〇万五四〇〇円(別紙15税額計算書参照)を免れた。

第三被告会社大農建設の業務に関し、法人税を免れようと企て、

一  売上金額の一部を除外するなどの方法により所得の一部を秘匿して、被告会社大農建設の昭和六一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一三〇五万七五八三円(別紙8修正損益計算書参照)あったのに、昭和六二年二月一六日、大阪府東大阪市永和二丁目三番八号所在の所轄東大阪税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二七三万九一三三円で、これに対する法人税額が七二万一五〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を経過させた結果、この事業年度における正規の法人税額四五四万二一〇〇円との差額三八二万六〇〇円(別紙16税額計算書参照)を免れた。

二  不動産売買における仕入金額の水増し、あるいは売上金額の圧縮などの方法により所得の一部と課税土地譲渡利益金額の一部を秘匿して、被告会社大農建設の昭和六二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額が六億七五二一万四一三二円(別紙9修正損益計算書参照)、課税土地譲渡利益金額が五億七八六二万八〇〇〇円(別紙10修正損益計算書参照)あったのに、昭和六三年二月二九日、前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億七五四八万三三円で、課税土地譲渡利益金額が一億一七六四万二〇〇〇円(ただし、申告書は誤って七六四四万三〇〇〇円と記載。)で、これに対する法人税額が九五七七万三〇〇〇円(ただし、申告書は誤って八七五三万三二〇〇円と記載。)である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を経過させた結果、この事業年度における正規の法人税額四億一四三七万二五〇〇円との差額三億一八五九万九五〇〇円(別紙17税額計算書参照)を免れた。

(証拠)

(注) 括弧内の漢数字は証拠の検察官請求番号を示す。また、括弧内の被告人名は当該証拠がその被告人のみの関係の証拠であることを示す。

全部の事実について

1  被告人の

(1)  公判供述(第九回、第一〇回)

(2)  公判供述記載(第七回、第八回)

(3)  検察官調書(一五六〔大農建設、被告人〕、一五七〔大農建設、被告人〕、二八二〔大谷興産、一五六と同一証拠〕、二八三〔大谷興産、一五七と同一証拠〕)

(4)  質問てん末書(一三七〔大農建設、不同意部分を除く〕、一三七〔被告人〕、一三八〔大農建設、不同意部分を除く〕、一三八〔被告人〕、一三九〔大農建設、不同意部分を除く〕、一三九〔被告人〕、一四一〔大農建設、不同意部分を除く〕、一四一〔被告人〕、一五二〔大農建設、不同意部分を除く〕、一五二〔被告人〕、一五三〔大農建設、不同意部分を除く〕、一五三〔被告人〕、一五四〔大農建設、不同意部分を除く〕、一五四〔被告人〕、一五五〔大農建設、不同意部分を除く〕、一五五〔被告人〕、二六五〔大谷興産、一三七と同一証拠、不同意部分を除く〕、二六六〔大谷興産、一三八と同一証拠、不同意部分を除く〕、二六七〔大谷興産、一三九と同一証拠、不同意部分を除く〕、二六九〔大谷興産、一四一と同一証拠、不同意部分を除く〕、二七八〔大谷興産、一五二と同一証拠、不同意部分を除く〕、二七九〔大谷興産、一五三と同一証拠、不同意部分を除く〕、二八〇〔大谷興産、一五四と同一証拠、不同意部分を除く〕、二八一〔大谷興産、一五五と同一証拠、不同意部分を除く〕)

2  山中正二の

(1)  公判供述(第一〇回)

(2)  公判供述記載(第五回、第六回)

(3)  検察官調書(九〇〔大農建設〕、九〇〔被告人、不同意部分を除く〕、九一〔大農建設、被告人〕、九二〔大農建設、被告人〕、二二六〔大谷興産、九〇と同一証拠〕、二二七〔大谷興産、九一と同一証拠〕、二二八〔大谷興産、九二と同一証拠〕)

(4)  質問てん末書(六六〔大農建設〕、六六〔被告人、不同意部分を除く〕、六七〔被告人、不同意部分を除く〕、七九〔大農建設、被告人〕、二〇六〔大谷興産、六六と同一証拠、不同意部分を除く〕、二一七〔大谷興産、七九と同一証拠〕)

3  北田竹男の検察官調書(九六〔大農建設、被告人、不同意部分を除く〕、九七〔大農建設、被告人〕、九八〔大農建設、被告人〕、二三二〔大谷興産、九六と同一証拠、不同意部分を除く〕、二三三〔大谷興産、九七と同一証拠〕、二三四〔大谷興産、九八と同一証拠〕)、質問てん末書(九三〔大農建設、被告人、不同意部分を除く〕、九四〔大農建設、被告人、不同意部分を除く〕、九五〔大農建設、被告人〕、二二九〔大谷興産、九三と同一証拠、不同意部分を除く〕、二三〇〔大谷興産、九四と同一証拠、不同意部分を除く〕二三一〔大谷興産、九五と同一証拠〕)

4  南口純一の質問てん末書(一一三〔大農建設、被告人〕、二四八〔大谷興産、一一三と同一証拠〕)

5  斉藤祥吉の質問てん末書(一一七〔大農建設、被告人〕、二五二〔大谷興産、一一七と同一証拠〕)

6  山野上国雄の質問てん末書(一一八〔大農建設、被告人〕、二五三〔大谷興産、一一八と同一証拠〕)

第一、第二の事実について

7  被告人の質問てん末書(一四二〔被告人〕、二七〇〔大谷興産、一四二と同一証拠、不同意部分を除く〕)

8  山中正二の質問てん末書(七二〔被告人、不同意部分を除く〕、八一〔被告人、不同意部分を除く〕、二一二〔大谷興産、七二と同一証拠、不同意部分を除く〕、二一八〔大谷興産、八一と同一証拠、不同意部分を除く〕)

9  金田吉晴の検察官調書(一〇一〔被告人、不同意部分を除く〕、二三七〔大谷興産、一〇一と同一証拠、不同意部分を除く〕)、質問てん末書(九九〔被告人、不同意部分を除く〕、二三五〔大谷興産、九九と同一証拠、不同意部分を除く〕)

10  宮本博美の検察官調書(一〇三〔被告人、不同意部分を除く〕)

11  三好英昭の質問てん末書(一〇八〔被告人〕、二四三〔大谷興産、一〇八と同一証拠〕)

12  吉井正三の質問てん末書(一一〇〔被告人〕、二四五〔大谷興産、一一〇と同一証拠〕)

13  田子愛三の質問てん末書(一一一〔被告人〕、二四六〔大谷興産、一一一と同一証拠〕)

14  査察官調査書(五三〔被告人〕、一九五〔大谷興産、五三と同一証拠〕)

第一、第三の事実について

15  山中正二の質問てん末書(六八〔大農建設、被告人〕)

16  宮本博美の検察官調書(二三九〔大谷興産、一〇三と同一証拠、不同意部分を除く〕、質問てん末書(一〇二〔大農建設、被告人、不同意部分を除く〕)

17  査察官調査書(四七〔大農建設、被告人〕)

第一、第二の一、第三の二の事実について

18  査察官調査書(五九〔大農建設、被告人〕、二〇〇〔大谷興産、五九と同一証拠〕)

第一の事実について

19  被告人の質問てん末書(一四〇〔被告人〕、一四四〔被告人〕、一四七〔被告人〕、一四九〔被告人〕、一五一〔被告人〕)

20  山中正二の質問てん末書(七〇〔被告人、不同意部分を除く〕、七一〔被告人〕、七四〔被告人、不同意部分を除く〕、七六〔被告人、不同意部分を除く〕、八三〔被告人〕、八五〔被告人、不同意部分を除く〕、八六〔被告人、不同意部分を除く〕、八八〔被告人〕)

21  金田吉晴の質問てん末書(一〇〇〔被告人、不同意部分を除く〕)

22  光山嘉一の質問てん末書(一〇四〔被告人〕)

23  堀内善泉の質問てん末書(一〇五〔被告人〕)

24  斉藤隆の質問てん末書(一一二〔被告人〕)

25  谷和則の質問てん末書(一一五〔被告人〕、一一六〔被告人〕)

26  南口純一の質問てん末書(一一四〔被告人〕)

27  査察官調査書(六三〔被告人〕)

28  捜査報告書(八〔被告人〕)

第一の一、二、第二の一、第三の二の事実について

29  振替伝票(62/10期)三綴(二八九〔同押号の6〕)

第一の一、二の事実について

30  査察官調査書(四四〔被告人、不同意部分を除く〕)

第一の一、第二の一、第三の二の事実について

31  振替伝票(S61/4~S62/3)七綴(同押号の1)

第一の一の事実について

32  証明書(四〔被告人〕、五〔被告人〕)

33  62/3期総勘定元帳一綴(平成四年押第二九二号の8〔被告人〕)

第一の二、三、第二、第三の事実について

34  査察官調査書(四九〔大農建設、被告人〕、五〇〔大農建設、被告人〕、一九二〔大谷興産、四九と同一証拠〕、一九三〔大谷興産、五〇と同一証拠〕)

第一の二、三、第二の二、第三の二の事実について

35  査察官調査書(六一〔大農建設、被告人〕、二〇二〔大谷興産、六一と同一証拠〕)

第一の二、三、第三の二の事実について

36  査察官調査書(二〇〔大農建設、被告人〕、二二〔大農建設、被告人〕)

第一の二、三の事実について

37  査察官調査書(二六〔被告人〕、五六〔被告人〕、五八〔被告人〕)

第一の二、第二の一の事実について

38  63/3期決算整理書類(ファイル共)一綴(同押号の2〔大谷興産、被告人〕、63/3期P/L科目元帳(ファイル共)一綴(同押号の3〔大谷興産、被告人〕、62/10期元帳一綴(同押号の4〔大谷興産、被告人〕、62/10期決算整理と表記のファイル一綴(同押号の5〔大谷興産、被告人〕)

第一の二の事実について

39  査察官調査書(二九〔被告人〕、三二〔被告人〕、三五〔被告人〕、四一〔被告人〕、五二〔被告人〕、五五〔被告人〕、六〇〔被告人〕、六二〔被告人〕)

40  証明書(六〔被告人〕)

第一の三の事実について

41  査察官調査書(四二〔被告人〕)

42  証明書(七〔被告人〕)

第二、第三の事実について

43  被告人の質問てん末書(一四八〔大農建設、一四七と同一証拠、不同意部分を除く〕、一四八〔被告人、一四七と同一証拠〕、一五〇〔大農建設、一四九と同一証拠、不同意部分を除く〕、一五〇〔被告人、一四九と同一証拠〕、二七四〔大谷興産、一四八と同一証拠、不同意部分を除く〕、二七六〔大谷興産、一五〇と同一証拠、不同意部分を除く〕)

44  山中正二の質問てん末書(八七〔大農建設、八六と同一証拠〕、八七〔被告人、八六と同一証拠、不同意部分を除く〕、八九〔大農建設、被告人、八八と同一証拠〕、二二三〔大谷興産、八七と同一証拠、不同意部分を除く〕、二二五〔大谷興産、八九と同一証拠〕)

45  福井義剛の質問てん末書(一〇九〔大農建設、被告人〕、二四四〔大谷興産、一〇九と同一証拠〕)

第二の事実について

46  山中正二の質問てん末書(六九〔被告人、六八と同一証拠〕、七五〔被告人、七四と同一証拠、不同意部分を除く〕、七七〔被告人、七六と同一証拠、不同意部分を除く〕、八四〔被告人、八三と同一証拠〕、二〇九〔大谷興産、六九と同一証拠〕、二一四〔大谷興産、七五と同一証拠、不同意部分を除く〕、二一六〔大谷興産、七七と同一証拠、不同意部分を除く〕、二二〇〔大谷興産、八四と同一証拠〕、一四五〔被告人、一四四と同一証拠〕、二七二〔大谷興産、一四五と同一証拠、不同意部分を除く〕)

47  山下昇吾の質問てん末書(一〇七〔被告人〕、二四二〔大谷興産、一〇七と同一証拠〕)

48  査察官調査書(二一〔被告人〕、二三〔被告人、二二と同一証拠〕、二五〔被告人、二四と同一証拠〕、二八〔被告人、二六と同一証拠〕、四八〔被告人、四七と同一証拠〕、五七〔被告人、五六と同一証拠〕、六五〔被告人〕、一七二〔大谷興産、二一と同一証拠〕、一七四〔大谷興産、二三と同一証拠〕、一七五〔大谷興産、二五と同一証拠〕、一七七〔大谷興産、二八と同一証拠〕、一九一〔大谷興産、四八と同一証拠〕、一九八〔大谷興産、五七と同一証拠〕、二〇五〔大谷興産、六五と同一証拠〕、二六四〔大谷興産、一三五と同一証拠〕)

49  捜査報告書(一三〔被告人〕、一七〇〔大谷興産、一三と同一証拠〕)

第二の一、第三の二の事実について

50  振替伝票(62/1~62/12)三綴(同押号の7)

第二の一の事実について

51  査察官調査書(三〇〔被告人、二九と同一証拠〕、三三〔被告人、三二と同一証拠〕、三六〔被告人、三五と同一証拠〕、三八〔被告人〕、四三〔被告人、不同意部分を除く〕、四五〔被告人、四四と同一証拠、不同意部分を除く〕、一八一〔大谷興産、三三と同一証拠〕、一八三〔大谷興産、三六と同一証拠〕、一八四〔大谷興産、三八と同一証拠〕、一八七〔大谷興産、四三と同一証拠、不同意部分を除く〕、一八九〔大谷興産、四五と同一証拠、不同意部分を除く〕)

52  証明書(一一〔被告人〕、一六八〔大谷興産、一一と同一証拠〕)

第二の二の事実について

53  証明書(一二〔被告人〕、一六九〔大谷興産、一二と同一証拠〕)

第三の事実について

54  被告人の質問てん末書(一四三〔大農建設、一四二と同一証拠、不同意部分を除く〕、一四三〔被告人、一四二と同一証拠〕、一四六〔大農建設、一四四と同一証拠、不同意部分を除く〕、一四六〔被告人、一四四と同一証拠〕)

55  山中正二の質問てん末書(七三〔大農建設、七二と同一証拠〕、七三〔被告人、七二と同一証拠、不同意部分を除く〕、七八〔大農建設、七六と同一証拠〕、七八〔被告人、不同意部分を除く〕、八〇〔大農建設、被告人〕、八二〔大農建設、八一と同一証拠〕、八二〔被告人、八一と同一証拠、不同意部分を除く〕)

56  山野為昭の質問てん末書(一〇六(〔大農建設、被告人〕)

57  査察官調査書(二四〔大農建設、被告人〕、二七〔大農建設、被告人、二六と同一証拠〕、五一〔大農建設、被告人〕、五四〔大農建設、被告人、五三と同一証拠〕)

58  捜査報告書(一九〔大農建設、被告人〕)

第三の一の事実について

59  査察官調査書(三四〔大農建設、被告人、三二と同一証拠〕、三九〔大農建設、被告人、三八と同一証拠〕、四〇〔大農建設、被告人〕)

60  証明書(一六〔大農建設、被告人〕、一七〔大農建設、被告人〕)

第三の二の事実について

61  査察官調査書(三一〔大農建設、被告人、二九と同一証拠〕、三七〔大農建設、被告人、三五と同一証拠〕、四六〔大農建設、被告人、四四と同一証拠〕、六四〔大農建設、被告人〕)

62  証明書(一八〔大農建設、被告人〕)

63  62/12期決算資料綴二綴(同押号の9の1、2〔大農建設、被告人〕)、62/12元帳一綴(同押号の10〔大農建設、被告人〕)

(弁護人の主張に対する判断)

第一手数料について

一  弁護人の主張

架空として否認されている被告会社二社を含む三社間の支払手数料及び受取手数料については、グループ内の取引に関して取引当事者にならない会社が仲介に入って手数料をもらうことは不動産業界の常識であり、一部経理処理のずさんさから否認されてもしかたのないものが含まれているものの、その他については架空ではない。また、仮りにこれら手数料が架空であったとしても、脱税額の計算の上では、全て架空であった方が被告会社にとっては有利なのであるから、被告人には、この点に関する脱税の犯意はなかったとみるべきである。

二  各会社ごとに個別に検討する。

1 第一農林

(一) 昭和六二年三月期

販売手数料の公表金額は、五八七二万八〇三八円で(第一農林の昭和六二年三月期の法人税確定申告書添付の損益計算書参照)、第一農林の総勘定元帳(平成四年押第二九二号の8。押収物については、すべて平成四年押第二九二号であるから、以下、括弧内に算用数字で符号のみを示す。)の「手数料」の「合計」欄にも同額が記載されているが、山中の検察官調書(検察官請求番号九二。以下、括弧内の漢数字は検察官請求番号を示す。)、宮本博実の質問てん末書(一〇二、二三八)によれば、決算期末時に計上されている三件の販売手数料、すなわち、<1>「北巽 大農 15,187,500」、<2>「大野台 大農 1,290,000」、<3>「立売堀 大谷え 20,000,000」は、いずれも第一農林の経理を担当していた北田竹男が決算期末の昭和六二年三月三一日付け加えたものと認められる。そして、査察官調査書(二九、四一)によれば、<1><2>のいずれについても、売買契約書には仲介者の記載が全くなく、また、<1><2><3>いずれも、その経理処理については、貸借勘定を相手科目にして支払手数料を計上しているものであって、現実の金銭の動きを伴わない帳簿上の操作にすぎないと認められる。個別にみても、<1>については、被告会社大農建設から仕入れた物件であり、被告会社大農建設に手数料を支払うこと自体不合理である。また、<1>と<2>は、いずれも受け取った側の被告会社大農建設で全く起票や記帳がなされていない。ただ、<3>については、被告会社大農建設の伝票等と符号し、山中正二(以下、「山中」という。)は、公判廷で、第一農林が被告会社大農建設へ物件を売ったときに被告会社大谷興産が仲介に入って現実に支払った手数料であるかのように証言しているが、仲介したことを裏付ける証拠資料は全くなく、前記総勘定元帳の記載からすると、<1><2>と同様に決算期末に貸借勘定を相手科目にして支払手数料を付け加えたものであって、現実の金銭の動きを伴わない帳簿上の操作と認められる。したがって、右いずれもが架空の支払手数料であると認められる。

(二) 昭和六三年三月期

仲介手数料収入として、第一農林の昭和六三年三月期の法人税確定申告書添付の損益計算書には、三五四七万四〇〇円が計上されているが、第一農林の昭和六三年三月期のP/L元帳(3)の「仲介料収入」の頁には、「63.3/31 摘要 借入金大谷 35,470,400」と記載されているのみであって、起票されたかどうか不明であり、したがって、その内訳は明らかでない。ただ、決算整理書類(2)や決算整理と表記のファイル(5)中のメモにより、その内訳は、<1>大阪市北区同心一丁目の物件について七〇一万五〇〇〇円、<2>大阪市北区同心二丁目の物件について一八七九万七四〇〇円、<3>大阪市生野区巽東の物件について九六五万八〇〇〇円であると推定できるが、査察官調査書(二四、二六、二九)によれば、いずれも売買契約書に仲介者の記載がないうえに、支払った側の被告会社大谷興産の仕訳伝票(6)及び元帳(4)と、物件ごとに対応させても、余りにも金額が合わない(<1>については、「23,851,000」、<2>については、「26,107,000」となっている。なお<3>については、「26,107,000」の上に「9,658,000」と鉛筆書きされているが、被告会社大谷興産の公表金額とは合わないので、これは改ざんしたものと認められる)。また、そもそも、第一農林グループ内では第一農林は宅建業者の免許を取得していなかったのであるから、わざわざ第一農林に仲介手数料収入を計上すること自体不自然である。従って、公表金額全額が仲介の内実を伴わない架空の手数料収入と認められる。

2 被告会社大谷興産(昭和六二年一〇月期)

法人税確定申告書添付の損益計算書には、「仲介手数料」として、七五八〇万二〇五五円が、「支払手数料」として、八七七三万四五〇〇円が計上されている。仲介手数料のうちの第一農林の架空支払手数料に相当する二〇〇〇万円については、前述のとおり、架空受取手数料であると認められる。

支払い手数料については、被告会社大谷興産の元帳(4)の「支払手数料」の残高欄には、「\175,394,500」と記載されているが、公表金額と合わない。そして、決算整理と表記のファイル(5)中のメモによれば、決算修正として帳簿操作を行ったことが認められるが、支払手数料の公表金額は、元帳に記載された金額をこのメモに基づいて加減算して算出したものと推定できる。この決算修正によって新たに販売手数料として付け加えられている<1>大阪市生野区林寺の物件についての四五〇万円(同物件については、一〇〇万円の支払い手数料が元帳に記載されているが、この一〇〇万円は、仕入として計上され、申告されている。)と、<2>大阪市住之江区東加賀屋の物件についての三七五万円(同物件については、三三〇万円の支払い手数料が元帳に記載されているが、この三三〇万円は、仕入として計上され、申告されている。)とは、何の根拠もない架空のものと認められる。次に、<3>大阪市東区船越町の物件については、第一農林に対する三五〇万円と、被告会社大農建設に対する二五〇〇万円とが、支払手数料として元帳に記帳されているものの、いずれも契約書等の具体的な資料もなく、受け入れの事実も認められないので、架空であると認められる。したがって、右の二八五〇万円全額が否認されるべきであるが、決算整理と表記のファイル(5)中のメモによれば、右の二八五〇万円の一部を決算時に仕入に振り替えたと認められるので、計算上は、仕入に振り替えていることが認められる一二三八万八〇〇〇円(この金額は、仕入金額としては否認されている。)を除いた一六一一万二〇〇〇円を架空支払手数料と認めることができる。最後に、<4>大阪市生野区巽東の物件については、元帳と伝票には、「\21,658,000」と記載されているが、領収証等の証拠上、この物件については、被告会社大谷興産が(株)伸興他一名に対して譲渡した際、既に鶴見土地に対して仲介手数料を支払っていることが認められ、わざわざ宅建業者の免許を持たない第一農林に更に販売手数料を支払う必要はないと認められ、また、第一農林の側の受入れの事実もないので、全額架空と認められるが、計算上は、仕入に振り替えたと認められる「\11,700,000」を除いた九九五万八〇〇〇円を手数料として否認することができる。この点、検察官は、受け入れた側の被告会社大農建設では、決算資料綴り(9)の中にある「大谷よりの仲介手数料」と題するメモに、一〇三〇万一〇〇〇円を振り替えた旨の記載があるので、一一三五万七〇〇〇円を否認すべきであるというが、被告会社大谷興産では、一一七〇万円を振り替えた可能性も否定できないので、被告人に有利に九九五万八〇〇〇円を否認するのが相当である。以上のとおり支払手数料合計三四三二万円が否認されることになる。

3 被告会社大農建設(昭和六二年一二月期)

被告会社大農建設は、昭和六二年一二月期において、法人税確定申告書添付の損益計算書記載のとおり、仲介手数料収入として一億一〇二八万三〇円を計上しているが、元帳(10)の「受取手数料」の「差引残高」欄には、「\81,194,030」と記載されていて、両者の差額二九〇八万六〇〇〇円については、被告会社大農建設側に公表金額を裏付ける証拠が全くないので架空と認めることができる。ただし、支払った側の被告会社大谷興産では、仕訳伝票(7)の中に、右元帳に記載のない四つの物件(「7/7 豊中本町」、「5/14 内平野」、「7/25 北巽」、「1/23 東加賀屋」)についての伝票があり、その合計は決算資料綴り(9)の中にある「大谷よりの仲介手数料」と題するメモに記載されている五つの物件のうち、被告会社大谷興産の仕訳伝票(7)の日付によって特定した四つの物件(7/7 豊中本町」、5/14 内平野」、「7/25 北巽」、「1/23 東加賀屋」)の合計額と同じ二八九八万六〇〇〇円である。一〇万円の差はあるものの、これが前記差額に対応するものと推定でき、従って、金額的には、被告人に有利な二九〇八万六〇〇〇円を架空の仲介手数料と認定できる。

三  以上に対し、被告人及び山中は、いずれも当公判廷で、なんらかの関与があれば手数料が発生するのは当然だと供述するが、まず、手数料等の発生がそのような不明瞭な関与の結果生じるものであるか疑問である。そして、結局は、仕入れた不動産をグループ外の第三者に売り渡した結果生じる利益を、第一農林グループ内にできるだけ留保するために、三社のうち二社が売買の当事者になり、残る一社がその仲介をしたという形を取って、契約当事者となった二社の間では仕入の水増しや、売上の除外を行い、残る一社に対する支払手数料を計上させていると認められるので、それら手数料の計上は、内実を伴わないものであると認められる。このことは、右に個別に検討したように、架空であると認定した各手数料については、売買契約書に仲介者の記載が全くないことや、経理処理上、支払った側と受け取った側とが対応関係にないこと、中には支払手数料を契約の相手方に支払ったものもあること、手数料の相手勘定を貸借科目にした帳簿上の操作にすぎないものであること、ほとんどが決算期末ころの処理により起票・記帳されていること等によって認められる。

なお、弁護人は、これら架空の手数料の計上の不自然さは、ずさんな経理処理によるもので、この点のほ脱の犯意はない旨主張するが、そもそも、勘定科目ごとに故意を考えることは適当ではないと考えられるうえ、手数料の経理操作は単純に手数料の経費を増額させるだけでなく、他の勘定科目に振り替えるなどの複雑な処理をしている上、仕入の水増しや売上の圧縮等に連動して行われたもので、結局は、被告人が、「もっと納める税金は安くならないか。」と指示していたことに基づくのであるから、ほ脱の犯意はあったと認めることはできる。弁護人は、受取手数料として架空の仲介手数料を計上することは、架空の利益を計上することであり、税法上はかえって不利になる点を指摘するが、仲介手数料の計上は支払手数料の計上に伴うものであり、土地重課税の関係では架空の手数料を計上することにも一応の意味があると認められるから、弁護人の主張は採用できない。

第二第一農林の平成元年三月期のほ脱の意思

一  弁護人の主張

この期の申告期限前である平成元年五月一六日、三社は、大阪国税局資料調査課の税務調査を受けたことから、被告人は、経理担当者山中に対して、「税金はきっちり納めるように。」と、脱税をせずに正確に申告するように指示していた。また、この期の確定申告書に不正計画処理をしていた部分が含まれていたとしても、被告人は、その具体的な申告内容の説明を受けていない。山中としても、既に脱税のために計画処理していた分について修正して申告しなかったのは、資料調査課の対応に忙殺されていたことと南口税理士に依頼して大阪国税局と所轄税務署に交渉してもらった結果、修正すべきものについては、後日修正申告すればよいとの当局の了解を得たからである。従って、被告人には、第一農林の平成元年三月期においては脱税の犯意は全くない。

二  しかし、この期におけるほ脱科目は、いずれも、被告人が、「納める税金をもっと少なくしろ。」と指示したことに基づいて、山中らが既に期中において処理してしまっているものばかりである。したがって、被告人が、これらを修正しないまま申告してしまったことを認識、認容していたかどうかが問題である。

三  被告人は、公判廷で、この期の収支に関する「売上高」と題するメモ(一五七末尾添付の資料7)を見た記憶はなく、その内容についても説明は受けていない旨供述している。

しかし、このメモに記載されているアクティブ住に対する売上除外の一〇〇〇万円の件については、「会議議題(営業部)」と題するメモ(一五七末尾添付の資料3参照)に、実質的経営者である被告人の了解を得たことを示す「OK」という文字があり、被告人も、公判廷で、その件に関する会議に出席し、説明を受けて了解したうえ、圧縮分の一〇〇〇万円は現金で受け取り、郷里の墓の費用に使ったことを認めている。また、関畿興産に対する架空貸倒の分についても、以前から山中の説明を受けて了解していたことを認めている。

そして、山中の検察官調書(九二)によれば、山中は、このメモに従って被告人に収支の内訳と納税額を説明したことが認められる。なお、山中は、公判廷では、被告人にこのメモは見せていないし、記載された内容についても説明していない旨証言しているが、山中の証言態度には、被告人の関与をことさら否定する態度が認められ、被告人は第一農林グループのワンマン的経営者であり、山中はその部下である経理担当者で、仕事のミスから給料の一部返上をしたこともあり、そのような二人の上下関係からすれば、山中の検察官調書こそ信用すべきである。

したがって、第一農林の平成元年三月期の申告内容に不正な部分が含まれていることは認識していたと認められ、不正な部分をそのままにして申告したことを認識、認容していたと認められる以上、ほ脱の犯意は認められ、後に修正すればよいと思っていたとしても、故意がないということはできない。

なお、南口税理士と税務署との交渉については、南口税理士の質問てん末書(一一三、一一四、二四八、二四九)や山中の公判供述によれば、山中から相談を受けたのは、土地重課についてだけで、架空貸倒や架空の販売員給与の点は相談されていないことが認められること、だからこそ土地重課の関係では修正するということで国税当局に認容してもらっていることが窺われること等からすれば、弁護人が主張するような事実は認められない。

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社 いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項

2  被告人 法人税法一五九条一項、二項

二  刑種の選択 懲役刑と罰金刑を併科(被告人)

三  併合罪加重

1  被告会社 刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人 刑法四五条前段、懲役刑について刑法四七条本文、一〇条(犯情の重い第一の二の罪の刑に加重)、罰金刑について刑法四八条二項

四  労役場留置 刑法一八条(被告人)

(量刑事情)

本件は、第一農林を中心とするグループ会社三社間の取引を利用して、仕入の水増しや売上の圧縮等を行って、昭和六二年から平成元年の三年度七期分で計一〇億余りをほ脱したという法人税法違反の事案である。同種事案に較べて、脱税額が極めて高額であるばかりか、ほ脱率についても、第一農林は平成元年三月期を除いて平均約九四・五パーセント、被告会社大谷興産は平均約九三パーセント、被告会社大農建設は平均約八〇・五パーセントといずれも高率であって、納税義務に著しく違反する脱税行為である。この点について、被告人は、不動産業界の不況期に備えて社内に利益を留保するために脱税に及んだ旨述べており、そうした事情もそれなりに理解できなくはないが、そのために脱税に及んだ動機が正当化されるわけではないことはいうまでもない。また、被告人は、帳簿、経理の知識が全くなく、税金を安くするようにと指示しただけというが、経理責任者らが脱税のために工作したのは、被告人が、執拗に納める税金を安くしろと経理担当者達に対して指示したからであり、だからこそ、前記のような高額、高率のほ脱の結果が生じたのである。これらの点を考慮すると、犯情は悪いというほかなく、この種の大口脱税犯に対する最近の納税者一般の厳しい処罰感情をも併せ考えるとき、被告人と被告会社らの刑事責任は相当に重いというべきである。

したがって、被告人にはこれまで前科前歴がないこと、既に本件については修正申告を行い、本税、付帯税、地方税などの大半を納め、残りも現在苦労して分割納付中であること等被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても、本件は到底刑執行猶予の事案ということはできず、被告人に対しては、主文のとおりの実刑をもって臨むのが相当である。

なお、本件は、被告会社として第一農林も起訴されて併合審理を受けてきたが、公判審理中の平成三年一〇月二二日合併により第一農林は解散した。そこで、当裁判所は、平成四年五月二六日、合併により解散し存続しなくなったことを理由に、刑訴法三三九条一項四号により、第一農林に対する公訴を棄却する決定をし、この決定は確定している。第一農林に対する判示第一の各事実が優に認定できる本件においては、第一農林は法人税法違反の罪で罰金に処せられるべきであったところ、吸収合併により消滅したため、第一農林において納付すべき罰金を免れた結果、罰金相当額の利益が第一農林を吸収した会社に留保されることになる。そして、合併当時、第一農林の実質的経営者は被告人であり、究極的には本件脱税による諸利益を享受できる最大の帰属者は被告人自身なのであるから、被告人に対しても主文のとおりの罰金刑を併科することはやむを得ない。

(出席した検察官宮下準二、弁護人小嶌信勝)

(裁判長裁判官 田中正人 裁判官 福井一郎 裁判官 平島正道)

別紙1 修正損益計算書

別紙2 修正損益計算書

別紙3 修正損益計算書

別紙4の(1) 修正損益計算書

(土地譲渡にかかる譲渡利益金額計算書)

別紙4の(2) 修正損益計算書

(土地譲渡にかかる譲渡利益金額計算書)

別紙4の(3) 修正損益計算書

(土地譲渡にかかる譲渡利益金額計算書)

別紙5 修正損益計算書

別紙6 修正損益計算書

別紙7の(1) 修正損益計算書

(土地譲渡にかかる譲渡利益金額計算書)

別紙7の(2) 修正損益計算書

(土地譲渡にかかる譲渡利益金額計算書)

別紙8 修正損益計算書

別紙9 修正損益計算書

別紙10 修正損益計算書

(土地譲渡にかかる譲渡利益金額計算書)

別紙11 税額計算書

別紙12 税額計算書

別紙13 税額計算書

別紙14 税額計算書

別紙15 税額計算書

別紙16 税額計算書

別紙17 税額計算書

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